エチオピアのコーヒーについて
その味わいを「品種」や「精製」など具体的な要因と合わせて解説します。
エチオピアのコーヒーの味わい

他では感じられないほどの華やかなフレーバーと、エキゾチックな風味が感じられるエチオピアのコーヒー。
では、なぜそのような風味が生まれるのか品種、標高、精製、等級の4つの観点から解説します。
エチオピアのコーヒーの品種

エチオピアの品種は2つの区分からなる
土着品種(Local Land Race):地元の栽培環境に適合して50年以上、もしくは100年以上前から原生している品種群の総称。
英語の「heirloom variety」に由来し、家宝という意味がある。
土着品種の別の呼称で、エチオピア原生種を指す呼び名としても使われる。
原生種の未定義のものの総称として用いられることが多い。
カッピングプロファイル
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Gedeo Zone※(イルガチェフェ)の土着品種の中でも有名な3種。それぞれが別の品種として区別されているが、単一ロットで流通していることは稀。
カッピングプロファイル
単一品種でのカップ情報が少なく、カップも取れていないため参考程度だが、クルメはオレンジ、アプリコット、乳酸系
JARC(ジマ・アグリカルチュアル・リサーチ・センター)選抜品種:エチオピア農業研究所(EIAR)が運営するエチオピアで最も重要なコーヒー機関の1つで、公的機関によって開始されたすべてのエチオピア国内研究を調整する責任がある中央国立研究所とされる。
出典、ソース
世界のコーヒー研究 |WCRがエチオピアで活動するためのパートナーシップを開始 (worldcoffeeresearch.org)
2004年パナマのCOE(カップオブエクセレンス)で1位を獲得して、史上最高額で落札されて一躍有名となった品種。
そのルーツはエチオピアのGesha村(ゲシャ村)の原生種と言われている。
エチオピアから、ケニア、タンザニアを経由してコスタリカからパナマに渡ったのが、俗にいう「ゲイシャ」とされ、極めて香り高くレモンティーのような風味が明確に感じられる。
この他に、エチオピアの私営企業であるGVCE(ゲシャ・ビレッジ・コーヒー・エステート)の選抜品種である「ゴリ・ゲシャ2011」や「ゲシャ1931」などがあるが、あくまでオリジナルとの類似点が多い別品種。
カッピングプロファイル
パナマで注目を集めたオリジナルの「ゲイシャ」はレモンティーのような透明感のある酸味を有するが、入賞ロットなどでないウォッシュドのものはテイストがやや弱くなる傾向。類似品種はややエチオピア原生種などに近いティーライクなテイスト。
ゲイシャに並び注目される品種。 当品種が発見されたWush Wushエリアは、Geshaエリアからわずか50kmと近く、フレーバーにも似た特徴がみられ近似性を感じさせる。
30年前にコロンビアのコーヒー研究機関であるセニカフェに苗が提供されたこともあり、コロンビアでの栽培もみられる。
カッピングプロファイル
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エチオピアならではの品種が多くユニークなテロワールを感じられる。
エチオピアで自生する品種の多くは、同国内でも限られた特定の地域の栽培環境に適合していることが多く、他生産国での栽培が難しいために、エチオピアならではの品種が多い。

フォレストコーヒーの割合が多いエチオピアならではの事情と言えそう。
エチオピアのコーヒー生産地の標高

コーヒーを栽培する際、一般的に標高が高い方良いとされ、朝晩の寒暖差がある事で、実が詰まった良質なコーヒーになる事が知られる。
では、エチオピアの標高はどうなっているのか。
✔︎エチオピアは生産地域全体の標高が高い。
エチオピアの主要な生産地で最も低い標高は、1400mそして、最も高い標高はイルガチェフェの2200m
- 標高が高く豆質は硬い
- 結果、糖類が多く密度が高いので焙煎で酸味が出やすい。(品種由来と思われる特徴的な香りもある)
エチオピアで行われる主な精製方法

エチオピアで行われる精製方法は主に2つ
- ナチュラル(乾式)
- ウォッシュド(水洗式)
✔︎近年精製の質が上がり、ナチュラルのG1も生まれた
収穫したコーヒーチェリーをそのまま天日干しにする方法。レンガ造りのパティオ(中庭)に広げることもあれば高床式の乾燥棚で行うこともある。適切に乾燥したら、果肉や外皮を脱穀して、精製された生豆は出荷までそのまま保存される。
果肉がついたそのままの状態で乾燥させるので、フルーティーなフレーバーが付与される傾向がある一方、管理が難しく、品質が安定しない傾向があるなどの欠点も。
収穫したコーヒーチェリーの果肉を除去して、発酵槽に浸けてから洗浄する事で、果肉を全て取り除いてから乾燥させる方法。
この精製方法は他の方法と比べ、早く均一に乾燥させられるので失敗が少なく、クリアな味わいになるが、発酵に使われた水は有害な可能性がある事や、水源が確保された地域でしか行えないなどの問題がある。
精製の質が上がったことで2010年代からウォッシュドのG1(最高等級)が流通し始め、そこから更に5年後の2015年ごろにナチュラルのG1が流通し始め、現在ではすっかり定着。高品質なアフリカコーヒーの代名詞となっている。
等級はどのように決まるのか

✔︎エチオピアの等級は欠点豆の多さで決められる
300gの見本に混入される欠点豆の数により等級が分けられる。
等級 | 欠点数 |
---|---|
G1 | 0〜3個 |
G2 | 4~12個 |
G3 | 13~27個 |
G4 | 28~45個 |
G5 | 46~90個 |
実際はG9までの全9等級まであるが、国外へ輸出される物はG5まで。
さらに日本に入ってくる物はG4までとなっている。

グレードの水準よりもやや欠品豆の数は多くなる印象。
【エチオピアのコーヒー生産新情報】
2008年にECX(エチオピア農産物取引所)が導入されてからは、9箇所の管理施設ごとに等級分け、管理されるので、細かい出自がわからないという問題があったが、2017年頃からはSCAA(アメリカスペシャルティ協会)や消費国からの働きかけもあり、ECXを介さずに農協や個人の農園単位での輸出が可能となった。
この頃から、以前はウォッシュドのみに適用されたG1とG2の等級も、ナチュラルなど他の精製方法の物にも適用されるようになり、Qグレード(カッピング)方式での格付けも行われるようになり、品質が向上しつつある。
フォレストコーヒーとエチオピア

✔︎エチオピアのコーヒーの約45%は自生またはほぼ自生
野生で自生するコーヒーは以下の2種
フォレストコーヒー
人の手が入っておらず、野生の状態で自生しているコーヒーノキ。収穫に際する管理は行われており、意図的に状態の維持は行われている。自生しているコーヒーは収穫がしずらく、生産量も全体のわずか10%程度なので、あまり市場に出回らないとか。
セミフォレストコーヒー
フォレストコーヒーと違い、自然な生育と再生を促すために、2~3年の周期で周辺の生育環境の整備にのみ人の手が加えられたほぼ自生するコーヒーノキ。生産量は全体の約35%でフォレストコーヒーと合わせて生産量全体の約45%にも上る。

残りは人の手をかけられ栽培される「ガーデンコーヒー」や「エステートコーヒー」
まとめ
エチオピアのコーヒーの味わいについて、解説しました。
✔︎主な栽培品種
- 土着品種
・エアルーム
・クルメ、デガ、ウォリショ - JARC選抜品種
・ゲイシャ
・ウシュウシュ種
エチオピアならではの品種が多く、テロワールがはっきりと感じられる。
✔︎生産地の標高
生産地の標高は1400m〜2200mで、生産エリア全体の標高が高い。
✔︎主な精製方法
- ナチュラル(乾式)
- ウォッシュド(水洗式)
✔︎等級
- 欠点豆の多さによる等級分け
300g中の欠点豆の数で等級わけされG1〜G9まで(日本で流通するのはG5まで)
✔︎フォレストコーヒーとエチオピア
エチオピアのコーヒー生産量の約45%がフォレストコーヒー
今回説明した4つの項目が味わいに大きく関わり、生産地ごとの違いを生み出しています。
エチオピアのコーヒーを選ぶ時の参考にしてくださいね。
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