ケニアのコーヒーについて
その味わいを「品種」や「精製」など具体的な要因と合わせて解説します。
ケニアのコーヒーの味わい

主要品種SL28や34の持つ果実味をケニアで発展した精製工程であるソーキングにより高めた濃厚なカシスのような果実味のあるフレーバーのコーヒー。
詳細について、品種、標高、精製、等級の4つの観点から解説します。
ケニアのコーヒーの品種

ケニアで主に生産される品種は以下の3つを含む5つ
1930年(正確には1935年)にケニアのスコット研究所(SL)が、乾燥に強いタンザニア原産の品種から選別した。
出典:ビジュアルスペシャルティーコーヒー大事典2ndedition「コーヒーの品種」
サイズは平均よりかなり大きく、果実味のあるコーヒーができると考えられていて、カシス例えられることが多い。
SL28はかつて”Tanganyika Drought Resistant”(タンガニカ※現在のタンザニアの矮小耐性種)と呼ばれていた単一の木を1935年に選抜したのがもとになっています。
出典:コーヒー品種の樹海をさまよう!! 其の四、アフリカ編Part1 | Roast Design Coffee Blog
近年の研究の結果だとSL28種はブルボン種系に属する品種ということが分かっています。
カッピングプロファイル
カシス、シトラス、ベリー
ブルボン島(現在のレユニオン島)からアフリカ大陸へ持ち込まれ、タンザニアからケニアへと伝わった「フレンチ・ミッション」と呼ばれるブルボンから選別された。
出典:ビジュアルスペシャルティーコーヒー大事典2ndedition「コーヒーの品種」
非常に果実味あるフレーバーを持つが、カップに注いだときの風味では(SL28より)劣ると考えられている。
上記のようにブルボンから派生していると思われていましたが…☟
近年の研究によると、SL34種はティピカ種に遺伝的に近く、このことからSL34種はフレンチミッションが起源ではない可能性を否定できないとのことです。
出典:Roast Design Coffee Blog様
SL28と近い品種とされていましたが、そうとも言えなそう
カッピングプロファイル
カシス、ベリー、シトラス
ハイブリッド(ロブスタや、その交配種と交配した品種)系品種。
出典:Roast Design Coffee Blog様
1968年に蔓延したCBD(コーヒーノキの病気)によって年間生産量の50%を失ったケニアが病気に早急に対応するべくRuiru地区の研究所で、CBDに対抗できる品種として1985年にリリースしたのがRuiru11種でした。
手作業での受粉が必要なため、多くの種子を用意することが難しく、いまだに農家の需要に応えきれていない状態です。
単一品種での流通はしておらず、ロットの内5%~10%程度含まれるに留まっているとの事ですが、ハイブリット品種だからか、カップとしての評価はイマイチという声もあるようです。
カッピングプロファイル
—–
紹介している3つ以外にもブルボン系のK7や近年植え替えが進められ期待値の高いバティアンなど、有望な品種が控えていて、まだまだクオリティは上がっていきそう。

コーヒーの起源とされるエチオピアの隣国でありながら栽培が始まったのは1893年と割と最近になってから。
ケニアのコーヒー生産地の標高

コーヒーを栽培する際、一般的に標高が高い方良いとされ、朝晩の寒暖差がある事で、実が詰まった良質なコーヒーになる事が知られる。
では、ケニアの標高はどうなっているのか。
✔︎ケニアの標高はやや高い傾向。
ケニアの主要な生産地の標高の平均は1700m程度。そして、最も高い標高はニエリの2300m
- 標高が高くソーキング(精製時に水に漬ける)されていること等も関係してか、特に豆質は硬い
- 結果、糖類が多く密度が高いので焙煎で酸味が出やすく、品種特性もあり果実味が強い
ケニアで行われる主な精製方法

ケニアで行われる精製方法はウォッシュドと呼ばれる水洗式の方法ですが、ソーキングといわれる特別な工程が加えられています。
✔︎ウォッシュドにケニア特有のソーキングの工程を加えることで、よりクリーンな風味特性に
収穫したコーヒーチェリーの果肉を除去して、(※)発酵槽に浸けてから洗浄する事で、果肉を全て取り除いてから乾燥させる方法。
この精製方法は他の方法と比べ、早く均一に乾燥させられるので失敗が少なく、クリアな味わいになりますが、発酵に使われた水は有害な可能性がある事や、水源が確保された地域でしか行えないなどの問題があります。
(※)この工程の後にソーキングと呼ばれる工程が行われます。☟
「ソーキング」とは
出典:Roast Design Coffee Blog様
水洗発酵後のパーチメントをさらにきれいな水でソーキングタンクにて漬けるといったものです(これも大体24時間位)。なおSoaking(ソーキング)は“すすぐ”という意味です。
ソーキング(もといケニアについて)暮らしと珈琲の動画でも触れられています。(13分50秒頃)
動画上ではダブルファーメンテーションと言われているのがソーキングの工程になります。

ケニア特有の濃厚で果実味あるフレーバーも精製が大きな要因の一つになっているのは間違なさそうですね。
等級はどのように決まるのか

✔︎ケニアの等級はスクリーン(豆の大きさ)で決められる
等級 | スクリーンサイズ(豆の大きさ) |
---|---|
AA | 17~18(7.2㎜以上) |
AB | 15~16 A(約6.5㎜)とB(約6㎜) |
C | 6㎜未満 |
TT | AAとABから比重選別で弾かれた豆 |
T | Cから比重選別で弾かれた豆 |
PB | 小粒豆の中でも丸豆だけ集めた物 |
ケニアの他にコロンビアやタンザニアでもスクリーンサイズ(豆の大きさ)で等級が決められていますが、今のところ味との因果関係は極めて薄いとされているので、特別な理由がない場合はABなどの等級の低い安価なものがおすすめです。(当記事中で紹介させて頂いた暮らしと珈琲の動画「コーヒーをサイズ別に同じ条件で3種類の見比べてみたら驚きが止まらない」では因果関係ありとの報告)

ケニアの等級にはAAの上にE(エレファントビーン)なる巨大な豆もあるとか(流通が少なすぎて未確認)
まとめ
ケニアのコーヒーの味わいについて、解説しました。
✔︎主な栽培品種
- SL28
- SL34
- Ruiru11
ブルボン系のK7や期待値の高いバティアンなど、有望な品種への植え替えもあり、まだまだクオリティは上がっていきそう
✔︎生産地の標高
生産地の標高は1300m〜2300mで隣国のエチオピア程ではないがやや高い。
✔︎主な精製方法
- ウォッシュド(水洗式)
- サンドライ(ナチュラル)
✔︎等級
- 豆の大きさ(スケール)による等級分け
今回説明した4つの項目が味わいに大きく関わり、生産地ごとの違いを生み出しています。
ケニアのコーヒーを選ぶ時の参考にしてくださいね。
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