インドネシアのコーヒーについて
その味わいを「品種」や「精製」など具体的な要因と合わせて解説します。
インドネシアのコーヒーの味わい

インドネシア特有のスマトラ式という精製に由来する、苦みのあるボディー(濃度感)のしっかりした味わいのコーヒー。
詳細について、品種、標高、精製、等級の4つの観点から解説します。
インドネシアのコーヒーの品種

インドネシアで生産される品種は様々、比較的多いのが以下の3つ
「クラシックスマトラ」↓という場合は、インドネシア西部に残されていたアラビカ種のことですが「スマトラ」という場合は、ブラジルから流入したブラジル産の品種のことです。
出典:コーヒーコーディネーター養成講座テキスト1
イエメンからオランダ人によってインドを経てジャカルタに持ち込まれたティピカ種。ジャワ島の西側に植えられ、その後インドネシア各地に伝播していきました。1880年代にさび病によってほぼ殲滅。北スマトラの一部。それとジャワ島の限定された区域に残っています。
出典:Roast Design Coffee Blog様
カッピングプロファイル ※「クラシックスマトラ」ではなく「スマトラ」を想定
アーシー、ナッツ、チョコレート
アラビカ種とロブスタ種を交配したハイブリッド・ティモールとカトゥーラ種を交配したカチモール種の一種。
主にスマトラ島を中心に植えられています。アチェ州Aceh Tenggah地区の名前からアテンと名づけられました。
出典:Roast Design Coffee Blog様
カッピングプロファイル
アーシー、スパイシー、カカオ、ライム、
正しくはカネフォーラ種の変種ですが、カネフォーラ種をのほとんどがロブスタ種でカネフォーラ種全般をロブスタ種と一括りに呼ばれています。
病害虫に強く、高温多湿にも適応する事から、ラテン語で「強靭」を意味する「Robust」にちなんだ名前が付けられました。
成長も早く収量も多いことから量産品種として栽培されていますが、ティピカやブルボンで知られるアラビカ種と比較すると風味が劣るとされます。
カッピングプロファイル
—–強い苦みやロブ臭と呼ばれる独特な臭いが特徴。
紹介している3つ以外にもジャバやオナン・ガンジャンなど特有の品種の他にブルボンやカトゥアイなども栽培されていますが、アラビカ種やハイブリッド品種は全体の1割にとどまり残りの9割はロブスタ種が栽培されています。

2019年にインドネシア初のCOE(カップオブエクセレンス)が開催されて、従来のスマトラ式以外の方法で精製されたコーヒーも数多くエントリーされたようなので、これからどんどん変化していく事が予想されます。
インドネシアのコーヒー生産地の標高

コーヒーを栽培する際、一般的に標高が高い方良いとされ、朝晩の寒暖差がある事で、実が詰まった良質なコーヒーになる事が知られています。
では、インドネシアの標高はどうなっているのでしょうか。
インドネシアの主要な生産地で最も低い標高は、ジャワ島西側の900mそして、最も高い標高もジャワ島東側の1900mです。
ジャワ島西側を除き主要生産地のほとんどは1100mを超えているので、まずまずといえそうです。
インドネシアで行われる主な精製方法

インドネシアは独自の手法で
- スマトラ式
- アチェ式(※)
上記の2つの方法の他に一部でナチュラルやウォッシュドも行われています。
インドネシアで良く行われる精製方式。スマトラ式では果肉を除去してからの乾燥を(水分含有量が)30~35%で終わらせる。その後パーチメントを取り除いて生豆にしてから、再度、腐敗の心配なく保存できる状態になるまで乾かす。この2回目の乾燥で、コーヒー豆は深い濃緑色になる。
出典:ビジュアルスペシャルティーコーヒー大事典2ndedition「コーヒーの精製」
乾燥を2度行うこと、2度目の乾燥時にパーチメントを除去して生豆の状態で乾燥させることなど、他の方法とは異なる点ばかりです。
通常のスマトラ式が収穫してすぐに果肉を除去して乾燥させるのに対し、アチェ式では、収穫してから1日水に漬けてから、果肉除去の工程に進むという違いがあります。
ただ、流通時には精製方法の記載があるアチェ産の物もスマトラ式と表記されているようなので、スマトラ式の手法の一つとして扱われているのかもしれません。

収穫期が雨季と重なるインドネシアは乾燥に十分な時間をかけることが困難で、こういった背景が独自の短時間乾燥する方法「スマトラ式」が行われるようになった理由です。
(※)「アチェ式」についての情報の出典:「新解釈コーヒーの世界」(丸美珈琲店)Vol.16コーヒー豆の産地「インドネシア編」
コーヒーの実を食べたジャコウネコの糞から未消化のコーヒ豆を取り出した物で、すばらいフレーバーを持つ(らしい)珍品として高値で取引されています。ただ、ジャコウネコを檻に入れて無理やりコーヒーの実を食べさせるなどの虐待が問題視され、コーヒー関係者の中にはあまり良く思っていない人もいるようです。
等級はどのように決まるのか

インドネシアの等級は300gの見本に混入される欠点の数により等級が分けられます。
等級 | 欠点数 |
グレード1 (G1) | 0~11 |
グレード2 (G2) | 12~25 |
グレード3 (G3) | 26~44 |
グレード4a (G4a) | 45~60 |
グレード4b (G4b) | 61~80 |
グレード5 (G5) | 81~150 |
グレード6 (G6) | 151~225 |
欠品数方式の等級付けは直接の味わいと関係性は薄いものの、高得点で良い等級のものは精製や管理が上手くいっているということなので、必然的に味わいは良くなります。

最高等級のG1より上のSG(スーパーグレード)と呼ばれるものもあるとかないとか言われていますが、定義はあいまいなようで、あまりあてにならないので、気にしない方が良いかも。
インドネシアの「マンデリン」とは

日本でも人気の高いマンデリンの語源はインドネシアの民族の名前。
マンデリンの定義
全国公正取引協議会連合会によると
マンデリンとは
出典:全国公正取引協議会連合会公式サイト
インドネシアの北スマトラ州及びアチェ州(タケンゴン周辺のガヨウマウンテン生産地区を除く)にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
となっており、精製方法が「スマトラ式」であることが必要だとは記述されていません。
マンデリンの語源
1908年に流行したさび病によって、従来のアラビカ種を植えていた農園が壊滅的な被害を受けたため、さび病に強いロブスタ種に切り換えられたが、その中でかろうじて耐えたアラビカ種の栽培を行ったマンデリン族にちなみ、インドネシアスマトラ島における一部地域で栽培される、アラビカ種のコーヒー豆の銘柄が「マンデリン」とされている。

「マンデリン族」とはインドネシアに住むバタック族の中のマンダイリン系の人たちの呼び名。
まとめ
インドネシアのコーヒーの味わいについて、解説しました。
- スマトラ(ティピカ亜種)
- アテン
- ロブスタ種
ジャバやオナン・ガンジャンなど特有の品種が栽培されている。フレーバーはアーシーさとスパイシーさが特徴。
生産地の標高は900m〜1900mでアジアの生産地の中では最大級の標高。
- スマトラ式
- (アチェ式)
インドネシア特有の方法で収穫してからすぐに果肉除去して乾燥、パーチメントを除去して生豆の状態で再び乾燥させる。アチェ式は果肉除去の前に1日水に漬ける。
- 欠品数の点数による等級分け
G1~G6までの7段階評価。SG(スーパーグレード)があるともいわれるが、定かではない。
- マンデリンの定義
インドネシアの北スマトラ州及びアチェ州にて生産されたアラビカコーヒー豆。
- マンデリンの語源
1900年代にインドネシアでアラビカ種の栽培を行った「マンデリン族」に由来する。
今回説明した4つの項目(とおまけ1つ)が味わいに大きく関わり、生産地ごとの違いを生み出しています。
インドンネシアのコーヒーを選ぶ時の参考にしてくださいね。
コメント