コーヒー焙煎の初心者にもわかりやすく、焙煎で使われる専門用語を工程ごとに解説します。
経験者の方も意外と知らない用語が多い焙煎用語や、工程を確認してみてください。
焙煎の基本工程

✔︎焙煎中の工程は大きくわけて3つの工程がある
- 投入して水抜きが完了するまで:「水抜き」(ドライングフェーズ)
- 水抜き完了から1ハゼまで:「ー」(メイラードフェーズ)
- 1ハゼから煎り止めまで:「煎りこみ」(デベロップメントフェーズ)

予熱(暖機運転)

✔︎実際に焙煎を始める前に焙煎機を起動、加熱して暖めておくこと
あらかじめ焙煎機を暖めておくことで・・・
- 焙煎のつど条件を一定に揃えて再現性が高まる
- 投入直後から高いカロリーを与えられる
- 焙煎機に蓄えた熱でその後もスムーズに熱を与えられる

予熱の温度を200℃と他場合、5分程度で温めてめてすぐに投入した場合と30分かけて予熱し200℃で投入した時では、その後の進行は大きく異なる。再現性や安定性を求めるならある程度の時間をかけて暖気運転するのが良い。
投入温度

✔︎焙煎を開始するときの窯の温度
分序盤の進行は投入温度で調整することが多くその重要度は非常に高い・・・
- 焙煎する豆の量(基本的には多いほど高くなる)
- 中点の温度(基本的には高いほど高くなる)
- 天候、季節、湿度、気圧などに合わせて変える場合も

温度が上がりながらの投入だとその後の温度が上がりずらく、下がりながらの投入だと上がりやすい。一見逆になりそうな傾向なので注意。
中点(ボトム)

✔︎豆を投入してから、豆の冷気などで一時的に窯温度が下がりその下がり最も低くなった温度
中点は何のために確認するのか・・・
- バッチごとの差異を調整して仕上がりを揃えるための参考
- 中点以降の火力を調整する参考
- 中点の温度で味わいの傾向も変化する

中点が低いほど質感は重く、酸味が穏やかになり、高いほど質感は軽く、酸味がハッキリになる傾向。
比較的低温の中点のGW式と、対照的なPS式。この二つの手法でどのように味わいに違いが出るのか。
GW(George Howell)式
中点80℃~100℃になるように調整する
中点を100℃以下で抑えることで生豆の外皮の早急な角質化を防ぎ、序盤の脱水を円滑にする。
更に、脱水後に高い火力を当てることで、積極的にフレーバーを開かせる狙いがある。
中点の温度はGW式の要素の一つにすぎませんが、角質化を防ぎ円滑に脱水する事でその後脱水縮合という反応が促進され、コーヒーらしい良い苦みの元とされるクロロゲン酸ラクトン類が生じやすく、他の焙煎手法と比べて質感が重く酸が弱くなり、甘みを感じる(質感の重さや酸が弱いことで相対的に甘みが感じやすいと思われる)
PS(Paul Songer)式
中点110℃になるように調整する
一定の高温状態を維持することで、豆表面の粒子化を促進し、マウスフィール(質感)の向上を図る。
尚、投入後、1ハゼまでの温度上昇カーブは急勾配(高火力)となりその後は(可能であれば)予熱で焙煎を進行させる。
中点の温度はPS式の要素の一つにすぎませんが、中点が高く生豆表面が凝結しやすいため、繊維が崩落しにくく、初期の火力が高いので酸の形成が早い、そして焙煎後半の火力が低いので香が発達しにくいことから質感は軽く酸が強くなり、甘さは弱い(先のGW式と比較すると対照的)
※上記の記述の内容はすべて豆温度を指しています。(排気温度は20~30℃高温になる)
GW式・PS式の一連の記述は「Roast Design Coffee Blog様(ファナティック三神氏)」より出典。

出典元をご覧いただくとわかるように、上記の手法は本来中点以外にも色々な要素が合わさって行われる焙煎手法になるので、中点を該当温度にしただけで十分な効果が得られるものではないので注意。
水抜き・蒸らし(Drying Phase)

✔︎中点を過ぎて、ゴールド(またはその後、蒸気が落ち着き、生臭さが消える地点)までの焙煎序盤の工程。
水抜きとはなんなのか・・・
一定以下(一説には180℃以下)の温度での焙煎進行時に火力や排気を調整することで、それ以降の煎り込みので加水分解を抑え香気成分等を発達させること。
要は、生焼けにならない程度に序盤の焙煎の進行を調整するということ
水抜きの中でも序盤の一工程ととらえている場合もある(☟の引用参照)
手網焙煎での焙煎序盤(水抜き)でアルミ箔の蓋(一種のダンパー)をつけて水蒸気を逃がさないことにより→「水分が残った状態で温度が上がると加水分解反応が加速され、その後の香気成分を発達させる効果がある」との記述がある。
出典:コーヒー・ホーム・ロースティング28P
あくまで、水抜き序盤(~5分程度と推測)の話しで、それ以降はダンパーをある程度開けて水分を抜く事が推奨されている。
手網焙煎などの焙煎方法の場合、外気にさらされた状態での焙煎となるので、通常より水分が無くなるペースが速く乾燥しやすい。
こういった工夫をする事で乾燥を遅らせることで適度なペースでの水抜きにすることで、ゴム化などの化学反応を促進させる狙いがあると思われる。

色々と書いたが、より水分が抜けやすい序盤の温度や排気を調整することで(例外を除き基本的には)結果的に水分が抜けるだけで、抜くためのに特別な操作をしているわけではない。
ゴールド(Gold Point)

✔︎水抜きの工程の途中(このタイミングで水抜き終了と判断される場合もある)豆が色づき黄金色に変わる地点
水抜きの終わり=ゴールドと捉えられることもあるが、ロースターによってはゴールドに到達し、その後生臭さが消えて水抜き終了とする見方もある。(☟の引用参照)
Gold Colorも(水抜き終了と)ほぼ同じような意味合いでとらえられています。メイラード反応が活発になる地点とされ、この変色地点への到達が早すぎると、脱水不良となり、長すぎるとフレーバーの前駆体制分を失うとされています。この地点までをDrying Phaseと言い、Gold Colorから1ハゼまでをMailard Phaseと言います。Gold Colorの判定はこの2つのPhaseの中継地点のような位置づけになっています。
・水抜き= 蒸気が落ち着き、生臭さが消える地点。
出典:Roast Design Coffee Blog様
・Gold Color= 生豆の緑色が、黄金色に変色する地点。
水抜きの場合、投入後7~8分位に到達するのが一般的で、Gold Colorの場合は4~5分位が一般的です。

色も豆によって変わり、香も体調などで感じにくい事があるので、その両方を上手く使ってその後の焙煎に繋げていく物と考えればOK。
メイラードフェーズ(Maillard Phase)

✔︎水抜き終了後から1ハゼがくるまでの工程
ゴールドからメイラードフェイズにかけて豆にはゴム化現象が起きていて、(軍手などで)触るとクニッと柔らかくつぶれる。
香味やそれを元とする甘み成分が発達するタイミングで・・・
ゴム化している時のコーヒー豆は通常より焦げにくく、強い火力を与えられる。
ゴム化のメカニズムを理解すると予想とのギャップがあることがわかる(下記参照☟)


焙煎中の色を観察して「ゴム化」のタイミングや様子を確認するのは非常に重要。
1ハゼ(1stCrack)

✔︎豆内部の気圧が上がり、内部から破裂する事でパチパチと音がする事
一定以上の水分が残っているタイミングで熱が与えられる事で1ハゼが起こる。(詳しくは下記参照☟)
1ハゼは、豆がガラス化して硬くなり膨張しはじめる頃に起きますが、この時隙間の一部が塞がると、そこに溜まった水蒸気やガスが逃げ場を失って内圧がどんどん上がり、やがて破裂音とともにハゼるのだと考えられます。
出典:コーヒーの科学-焙煎の科学-189P
焙煎プロファイルによりハゼるタイミングは異なるが多くは・・・
- 7分~15分の間でハゼる
- ハゼは~1分程度続く
- 豆によりハゼやすいものとそうでない物がある

低温長時間焙煎を除き、ある程度しっかりハゼることが豆内部に火が通っている証拠であり、ハゼの勢いは非常に重要なチェックポイント。☜それまでの主張と異なっているのは自身が考察を重ねる中で変化した為。今後随時修正予定
2ハゼ(2ndCrack)

✔︎1ハゼが終わり、深煎りの焙煎度に差し掛かる頃に「ピチピチ」と2度目のハゼが起こる事
(詳しくは下記参照☟)
2ハゼの少し手前から、煙の色が少し変わって二酸化炭素などの燃焼ガスの発生が急増しますが、このガスの一部が内部の隙間に閉じ込められて逃げ場を失い、どんどん内圧が上がって限界を超えた瞬間、破裂音を発しながらハゼるのです。
出典:コーヒーの科学-焙煎の科学-189P

海外のロースターの場合2ハゼまで焙煎を進めることなく煎り止めする事が多いようで、ドリップで飲むより、エスプレッソで飲まれる事が多いよう(日本では深煎りも普通に普及している)
デベロップメントフェーズ(Development Phase)

✔︎1ハゼが始まってから、煎り止め(焙煎終了)までの工程
焙煎全体に対するこの工程の割合をDTR(Development Time Ratio)と呼び・・・
コーヒーコンサルタントのScott Rao氏は、1ハゼ後のDevelopment時間(Phase)は焙煎全体時間の20~25%程度が良いと提唱しています。それはScott氏本人が素晴らしいと感じた焙煎サンプルの多くが例外もありながら20%程度だったからだそうです。
出典:Roast Design Coffee Blog様
この理論に関して(特に日本では)懐疑的な部分もあり、出典元の記事を書いている三神氏もこの限りでないとのスタンス。

三神氏によるとWCRC2019年の優勝者はDTR10%だったという事で、推奨とされる20-25%に過度にこだわる必要はなさそう。
上記の工程を経て、予定の焙煎度に到達したら煎り止め。基本的にはクーラーで急冷して、それ以上焙煎が進む事を防ぐ。
その他の焙煎用語

✔︎焙煎で使われる専門用語の中でも重要な以下の3つ
- ROR(Rate of Rise)
30秒または1分ごとの上昇温度。6秒に1℃上昇したら、1分の場合 RORは10℃という事になる。
RORなんていわれたら難しそうだが、分かれば単純な事。
- DTR(Development Time Ratio)
コーヒーコンサルタントのScott Rao氏が提唱した概念です。1ハゼ開始から終了までの時間(Development Phase)とトータルの焙煎時間の比率を示します。Rao氏の度重なる検証の結果、DTRは20~25%のレンジが推奨とのことです。例えばトータル10分間の焙煎でDTRが20%だった場合Development Time(Phase)は2分という事になります。
出典:Roast Design Coffee Blog様
aillioの焙煎温度管理ソフト「RoasTime」やフリーの焙煎温度管理ソフト「アーチザン」などはハゼのタイミングを入力することで自動でDTRが算出されるようになっている事を考えると、焙煎においてある程度重要視されているともいえる。
- ニュートラル(Neutral)
ニュートラルとはドラムに入った熱風が滞ることがない程度に廃棄されている状態を示します。このニュートラルは同じガス圧の場合に、必要以上に熱を逃さない一番効率の良い状態となります。
出典:珈琲焙煎の書 86P
確認方法はテストスプーン口に手をかざして暖かいと感じる程度で、熱風が出ていない状態がニュートラルとなる。圧力計の他に、テストスプーン口の風速を計測して、ニュートラルを確認する方法もあるが、焙煎機によっても変わるので参考程度。空気は熱で膨張するため、温度が高ければ圧力も高まり、ニュートラルの位置も開放へと変化する。
以上、コーヒー焙煎の基本用語を工程ごとに解説しました。
コーヒーの焙煎についての情報はあまり公開されておらず、専門用語も知らないとわからない物もあって、初心者には難しく感じやすいと思います。当記事を参考にしてもらい、自信を持って焙煎に取り組んでもらえれば幸いです。
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