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【コーヒー焙煎】基本用語と工程の解説

焙煎
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コーヒー焙煎を始めたばかりの方や、焙煎に興味を持ち始めた方にとって、専門用語の多さは大きなハードルのひとつです。

本記事では、焙煎の工程を順番に追いながら、現場でよく使われる用語をひとつひとつわかりやすく解説します。経験者の方も「意外と知らなかった」という用語が見つかるかもしれません。ぜひ焙煎の基礎知識として活用してください。

焙煎の基本工程とは

焙煎工程の全体像

コーヒー焙煎の工程は、大きく3つのフェーズに分けることができます。

①ドライングフェーズ(水抜き) 投入〜水抜き完了まで
②メイラードフェーズ 水抜き完了〜1ハゼまで
③デベロップメントフェーズ(煎り込み) 1ハゼ〜煎り止めまで

この3つの流れを理解することが、焙煎全体像をつかむ最初のステップです。以降では各工程で登場する用語を順を追って解説します。

焙煎プロファイルのグラフ説明

① 予熱(暖機運転)

焙煎機の予熱・暖機運転

実際に焙煎を始める前に、焙煎機を起動・加熱して十分に温めておく工程です。

予熱をしっかり行うことで以下の3つの効果が得られます。

  • バッチごとの条件を揃えて再現性が高まる
  • 投入直後から十分な熱量を豆に与えられる
  • 焙煎機に蓄えた熱により、その後の工程もスムーズに進む

たとえば同じ200℃で投入する場合でも、5分で急いで温めた場合と30分かけて丁寧に暖気運転した場合では、その後の焙煎進行は大きく変わります。再現性・安定性を重視するなら、ある程度時間をかけた暖気運転が大切です。

② 投入温度

コーヒー焙煎の投入温度

生豆を焙煎機に投入するときの窯内温度のことです。焙煎序盤の進行を大きく左右する非常に重要なパラメーターです。

投入温度は以下の要素を考慮して決めます。

  • 焙煎する豆の量(多いほど高めに設定する傾向)
  • 目標とする中点(ボトム)の温度
  • 天候・季節・湿度・気圧などの環境要因

注意点として、温度が上昇しながら投入するとその後の温度が上がりにくく、下がりながら投入すると上がりやすいという、一見逆のような傾向があります。直感に反するため、しっかり頭に入れておきましょう。

③ 中点(ボトム)

コーヒー焙煎の中点ボトム温度

生豆を投入した後、豆の冷気で窯温度が一時的に下がり、そこから再び上昇に転じる最も低い温度のことです。

中点を確認する主な目的は以下の3つです。

  • バッチごとのブレを調整し、仕上がりを揃えるための基準にする
  • 中点以降の火力調整の参考にする
  • 中点の温度によって味わいの傾向が変わる

中点が低いほど質感は重く酸味が穏やかになり、高いほど質感は軽く酸味がハッキリする傾向があります。

GW式(George Howell式)

中点を80〜100℃に設定するスタイルです。中点を低く抑えることで生豆の外皮の早急な角質化を防ぎ、序盤の脱水を円滑に進めます。その後に高い火力を当てることでフレーバーを積極的に引き出します。脱水縮合が促進されることでクロロゲン酸ラクトン類(コーヒーらしい良い苦みの元)が生じやすく、他の手法と比べて質感が重く、酸が弱く、甘みを感じやすい傾向があります。

PS式(Paul Songer式)

中点を110℃前後に設定するスタイルです。一定の高温状態を維持することで豆表面の粒子化を促進し、マウスフィール(質感)の向上を図ります。投入後1ハゼまでの温度上昇カーブは急勾配で、その後は可能な限り余熱で焙煎を進行させます。GW式と比較すると質感は軽く、酸が強く、甘さは弱い傾向になります。

※上記はすべて豆温度を指しています(排気温度は20〜30℃高め)。
※GW式・PS式はそれぞれ中点以外の多くの要素が組み合わさった焙煎手法であり、中点の温度だけを合わせても十分な効果は得られません。

出典:Roast Design Coffee Blog(ファナティック三神氏)

▶ 投入温度と中点についての詳しい考察はこちら:【コーヒー焙煎】投入温度と中点は何度が良いのか考えてみる

④ 水抜き・蒸らし(Drying Phase)

コーヒー焙煎の水抜きドライングフェーズ

中点を過ぎてから、ゴールドポイント(またはその後に蒸気が落ち着き生臭さが消える地点)までの工程です。「ドライングフェーズ」とも呼ばれます。

水抜きを一言で表すと、「生焼けにならない程度に、焙煎序盤の進行を丁寧に調整する工程」です。一定以下の温度帯(一説には180℃以下)での進行を適切にコントロールすることで、その後の煎り込みで起きる過剰な加水分解を抑え、香気成分などを良好に発達させます。

「水抜き」と「蒸らし」は混同されがちですが、蒸らしを水抜きの序盤の一工程として捉える見方もあります。手網焙煎でアルミ箔の蓋をして水蒸気を逃がさないようにする手法がその一例で、「水分が残った状態で温度が上がると加水分解反応が加速され、その後の香気成分を発達させる効果がある」とされています(出典:コーヒー・ホーム・ロースティング 28P)。

重要な考え方として、水抜きは特別な操作で水分を「抜く」というよりも、序盤の温度や排気を調整することで焙煎の進行とともに自然に水分が抜けていくものです。

▶ 水抜きについての詳しい考察はこちら:コーヒー焙煎「水抜き」についての考察

⑤ ゴールドポイント(Gold Point)

コーヒー焙煎のゴールドポイント黄変

水抜き工程の途中で、豆の色が緑色から黄金色に変わる地点です。

水抜き(ドライングエンド) 蒸気が落ち着き、生臭さが消える地点。一般的に投入後7〜8分前後
ゴールドカラー 生豆の緑色が黄金色に変色する地点。一般的に投入後4〜5分前後

ゴールドカラーへの到達が早すぎると脱水不良になり、遅すぎるとフレーバーの前駆体成分を失うリスクがあります。この地点はドライングフェーズとメイラードフェーズの中継地点として位置づけられています(出典:Roast Design Coffee Blog)。豆の色と香りの両方を合わせて確認しながら、次の工程に繋げていきましょう。

⑥ メイラードフェーズ(Maillard Phase)

コーヒー焙煎のメイラードフェーズ

水抜き終了後から1ハゼが来るまでの工程です。温度の目安は150〜160℃以降〜1ハゼの間です。

この工程では豆の内部でアミノ酸と還元糖が反応して褐色色素「メラノイジン」が生成され(メイラード反応)、香り・甘み・コク・ボディの骨格となる成分が生み出されます。焙煎においてコーヒーの味の輪郭が最も決まる、重要なフェーズです。

また、このタイミングで豆には「ゴム化(ガラス転移)」と呼ばれる現象が起きており、軍手などで触るとクニッと柔らかく潰れます。ゴム化している間は豆が通常より焦げにくく、強い火力を与えやすい状態です。

ゴム化(ガラス転移)のメカニズム図

メイラードフェーズの長さと味わいの傾向

短いメイラードフェーズ アシディティが強く、軽やかでフレーバーが明瞭になりやすい。ただし豆内部の発達不足のリスクあり
長いメイラードフェーズ ボディが増し、甘みや複雑性が高まりやすい。ただし火力管理を誤るとベイクド(焼き詰め)のリスクあり

キャラメライゼーション(Caramelization)とは

メイラード反応と並行して、170℃付近からはキャラメライゼーション(還元糖の分解)も起き始めます。メイラード反応はアミノ酸と糖の反応であるのに対し、キャラメライゼーションは糖のみの分解です。甘みを強く作る反応ですが、同時に苦みも生み出します(プリンのカラメルソースをイメージするとわかりやすいです)。長すぎるとフラットで個性のない風味になるリスクがあります。

▶ ゴム化(含水量と焙煎進行)の考察はこちら:【コーヒー焙煎】豆の含水量による焙煎進行の変化を考察

⑦ 1ハゼ(1st Crack)

コーヒー焙煎の1ハゼ1stCrack

焙煎が進み豆内部の気圧が上がると、内側から細胞が破裂して「パチパチ」という音がします。これが1ハゼ(1st Crack)です。

豆がガラス化して硬くなり膨張し始める頃、隙間に溜まった水蒸気やガスが逃げ場を失って内圧が上昇し、破裂音とともにハゼます(出典:コーヒーの科学 焙煎の科学 189P)。

  • 投入後7〜15分の間にハゼることが多い(焙煎プロファイルによって異なる)
  • ハゼは1分前後続くことが多い
  • 豆の種類によってハゼやすいものとそうでないものがある

低温長時間焙煎を除き、ある程度しっかりハゼることが豆の内部に火が通っているひとつの証拠になります。ハゼの勢いと音は焙煎の重要なチェックポイントです。

▶ ハゼに関する詳しい解説はこちら:【コーヒー焙煎】ハゼない原因とハゼる焙煎のコツを解説

⑧ 2ハゼ(2nd Crack)

コーヒー焙煎の2ハゼ2ndCrack

1ハゼが終わり、焙煎が深煎りに差し掛かる頃に「ピチピチ」と聞こえる2度目のハゼです。

2ハゼの少し手前から煙の色が変わり、二酸化炭素などの燃焼ガスの発生が急増します。このガスが豆内部に閉じ込められて内圧が限界を超えた瞬間に2ハゼが起こります(出典:コーヒーの科学 189P)。

海外のロースターでは2ハゼまで焙煎を進めずに煎り止めするケースが多く、エスプレッソで飲まれることも多いようです。日本では深煎りも広く親しまれているため、2ハゼ前後での煎り止めが一般的です。

⑨ デベロップメントフェーズ(Development Phase)

コーヒー焙煎のデベロップメントフェーズ

1ハゼが始まってから煎り止め(焙煎終了)までの工程です。酸味・苦味・甘みのバランスと、後味・香り・口当たりまでが確定する、焙煎のクライマックスです。

この工程の焙煎全体に占める割合をDTR(Development Time Ratio)と呼びます。Scott Rao氏はDTRの目安として焙煎全体の20〜25%程度を提唱していますが、WCRC 2019年の優勝者のDTRは10%だったという事例もあります。20〜25%に過度にこだわる必要はなく、あくまで参考値として使うのが現実的です(出典:Roast Design Coffee Blog/ファナティック三神氏)。

予定の焙煎度に到達したら煎り止め。基本的にはクーラーで急冷して、それ以上焙煎が進むことを防ぎます。

その他の重要な焙煎用語

コーヒー焙煎のその他の用語

RoR(Rate of Rise)/温度上昇率

30秒または1分ごとの豆温度の上昇量です。たとえば1分間に10℃上昇した場合、RoRは10℃/分となります。Scott Rao氏は「RoRを投入から排出まで一定の割合で緩やかに下げ続けること」を理想とする考え方を提唱しています。特に注意したいのが「RoRクラッシュ」で、RoRが急激に低下・失速する現象のことです。ベイクドコーヒーの主な原因のひとつとされており、焙煎後半で火力を急に下げすぎたり、メイラードフェーズを必要以上に引き延ばしたりすると発生しやすいため注意が必要です。ArtisanやRoasTimeなどの焙煎管理ソフトではリアルタイムでRoRを確認できます。

DTR(Development Time Ratio)

1ハゼ開始から煎り止めまでの時間(デベロップメントフェーズ)が、焙煎全体の時間に占める割合のことです。Scott Rao氏が提唱した概念で、目安は20〜25%とされています。たとえば焙煎時間が合計10分でDTRが20%の場合、デベロップメントタイムは2分ということになります(出典:Roast Design Coffee Blog)。ArtisanやRoasTimeなどの焙煎ソフトは、ハゼのタイミングを入力することでDTRを自動算出してくれます。

ニュートラル(Neutral)

ドラム内に入った熱風が滞ることなく適切に排気されている状態を指します。同じガス圧の場合に、熱を必要以上に逃がさない最も効率の良い排気状態です(出典:珈琲焙煎の書 86P)。テストスプーン口に手をかざして「温かい」と感じる程度の気流がある状態が目安です。

ベイクドコーヒー(Baked Coffee)

RoRが低すぎる状態、または焙煎後半で温度の上昇が停滞した結果、風味が乏しくフラットになった焙煎の失敗です。コーヒーの芳香族化合物が十分に発達せず、特徴のない平坦な味わいになります。

モイスチャーロス(Moisture Loss)/重量減少率

焙煎前後の豆の重量差を、焙煎前の重量で割った比率のことです。焙煎度が深いほど重量減少率は大きくなる傾向があり、浅煎りで約12〜14%、深煎りで約16〜20%程度が一般的な目安です。同じ豆・同じ焙煎プロファイルで毎回記録しておくことで、焙煎の再現性を数値で確認する指標として活用できます。

焙煎の欠点:スコーチング・ティッピング・ベイクド

スコーチング(Scorching) 強すぎる火力により、熱が豆の中心に伝わる前に表面だけが焦げた状態。焦げたような苦みが出やすい。投入温度や序盤の火力が高すぎる場合に発生しやすい
ティッピング(Tipping) 豆の先端(チップ部分)が過剰な熱によって焦げる現象。スコーチングと同様、ドライングフェーズ序盤の過度な高火力が主な原因
ベイクド(Baked) RoRクラッシュや温度停滞による香気成分の発達不足。ポップコーンや穀物のような風味になることがある

まとめ

本記事で解説したコーヒー焙煎の基本用語と工程をまとめます。

予熱(暖機運転) 投入前に焙煎機を十分に温め、再現性・安定性を高める
投入温度 生豆を投入する際の窯温度。焙煎序盤の進行を左右する
中点(ボトム) 投入後に一時的に最も低くなった温度。味の傾向に影響する
水抜き(ドライングフェーズ) 焙煎序盤の乾燥工程。生焼けを防ぐ大切なフェーズ
ゴールドポイント 豆が黄金色に変色するタイミング。2つのフェーズの中継地点
メイラードフェーズ 香り・甘み・コクが生まれる工程。コーヒーの味の輪郭が決まる
キャラメライゼーション 170℃付近からの糖の分解反応。甘みと苦みを生む。長すぎるとフラットになるリスクあり
1ハゼ(1st Crack) 豆内部の破裂音。火が通っている証拠のひとつ
2ハゼ(2nd Crack) 深煎りに差し掛かる際の2度目のハゼ
デベロップメントフェーズ 1ハゼ〜煎り止めまで。味のバランスが最終決定するフェーズ
RoR 1分あたりの温度上昇率。焙煎管理の重要指標
RoRクラッシュ RoRが急激に低下する現象。ベイクドコーヒーの主な原因のひとつ
DTR デベロップメントフェーズの焙煎全体に対する割合
ニュートラル 最も効率の良い排気状態
ベイクドコーヒー RoR停滞による、風味が乏しく平坦になった焙煎失敗の状態
モイスチャーロス 焙煎前後の重量減少率。再現性の確認に活用できる指標
スコーチング・ティッピング 過剰な高火力による表面・先端の焦げ。序盤の火力管理で防ぐ

コーヒーの焙煎は情報が少なく専門用語も独特なものが多いため、初心者には難しく感じることも多いと思います。本記事で紹介した用語と工程を基礎として、ぜひ自信を持って焙煎に取り組んでみてください。

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