コーヒー本、特に焙煎について「珈琲大全」のレビューになります。
珈琲大全
◆3,080円(Amazon)
著者 田口護
刊行 2003年11月16日
概要
コーヒー豆の基礎知識
コーヒーの3原種やアラビカ種の品種などコーヒー生豆の情報を網羅して写真付きで解説。ハンドピックの手法や生豆の収穫年数と焙煎の関係など実用的な内容も解説されています。
約20年前のコーヒー業界を体系的に感じられる。
昔と今で変わった事(品種や品質)と、変わらずに受け継がれる技術や考え方(ハンドピックや収穫年数と焙煎の相関)が知れます。
どう変化したのかを感じられるという事は、これからどう変わっていくのかを知る糸口になり得ます。
システム珈琲学
各生産国のコーヒーを、生豆の色、大きさ、焙煎中の変化に着目して4タイプに分類、分析された「システム珈琲学」を解説されています。
コモディティコーヒーの焙煎を完全網羅。
カフェバッハが取り扱う33種、各銘柄ごとの推奨焙煎度、焙煎難易度を写真付きで完全解説されています。
「システム珈琲学」は共有する事の難しい焙煎のスタンダードを教えてくれるコーヒーの学問。基本とは言えない濃度の基本が詰まっています。
珈琲豆の焙煎
焙煎の巧拙がコーヒーの味のすべてを決めるといっても過言ではない。(本書より抜粋)
この言葉通り、コーヒーの味を決定づける焙煎という工程を、豆ごとの特徴と共に紐解きます。
コーヒーの味は焙煎で決まる、とは。
産地ごとや品種ごとの違いより、コーヒーの味わいにおける焙煎度の割合が大きい、という事。ではなぜ銘柄や品種ごとに味わいが変わるのか、その確信に迫ります。
ここで分類される推奨焙煎度は20年経った今でも多くのコーヒー焙煎店が取り入れている考え方になっています。
小型ロースターによる焙煎
自家焙煎店のスタンダードなフジローヤル5キロ釜とマイスター焙煎機を軸に、焙煎機の構造や、実際の焙煎手順を解説されています。
名店の焙煎を全公開。
再現性を追い求めるからこその細密な焙煎データが惜しむ事なく公開されており、温度推移や排気のタイミングなど、すぐにでも取り入れられるように記述されています。
ここで取り上げられるプロファイルは全行程20分以上で、やや長時間な焙煎プロファイルです。
珈琲の抽出
コーヒーの抽出の原則を解説。
今では当たり前になったお粉の挽き目や湯温、抽出速度などの味わいとの相関を分析、解明された完全解説となっています。
今も変わらず、信頼の基本原則。
本書が出版されて約20年経った今でも使われる原則を、写真や図で細かく説明されているので、わかりやすく実用的です。
抽出においては、知っているだけでコーヒーが美味しくなるような情報が沢山あり、本項でもそんな情報が綴られています。
まとめ
1.コーヒー豆の基礎知識
- コーヒー豆の三原種
- コーヒーの栽培条件
- コーヒーの栽培過程
- コーヒーの精製法
- アラビカ種の品種と品種改良
- コーヒーの格付け
- コーヒー生豆の正しい選び方とハンドピックの手法
- ニュークロップとオールドクロップ
2.システム珈琲学
- システム珈琲学とは
- 4タイプの特徴と味の傾向
- 4タイプ別コーヒー豆と焙煎度
3.珈琲豆の焙煎
- 焙煎度とは何か
- よいコーヒーとわるいコーヒー
- 生豆と焙煎の関係
- 手網焙煎に挑戦
- ブレンドの技術
4.小型ロースターによる焙煎
- 焙煎機の分類
- 焙煎機の構造
- 焙煎機の使い方
- さまざまな焙煎法
- 焙煎のケーススタディ
- 煎り止めのこつ
- カップテストの方法
5.珈琲の抽出
- コーヒー豆を挽く
- おいしいコーヒーを淹れる条件
- ペーパードリップの道具
- ペーパードリップによる抽出
- ネルドリップによる抽出
- エスプレッソについて
- その他の抽出器具
以上、5章、30項について説明されています。
情報量や、情報密度は最新のコーヒー専門書を遥かに凌駕する不屈の名著。
元SCAJ(日本スペシャルティーコーヒー協会)会長の田口護氏が業界のバイブルとして世に送り出した不屈の名著。これ以降刊行される全ての本はここで紹介される理論に基づいて展開されていきます。基準として揺るがない理論として、コーヒー沼のガイドブックである本書をお手元に置いておくとよいかも。
コメント