コーヒー焙煎本「Coffee Fanatic三神のスペシャルティコーヒー攻略本 “コーヒー・ファナティクス”(概論/焙煎/抽出)」のレビューになります。
Coffee Fanatic三神のスペシャルティコーヒー攻略本
◆660円(Amazon)
著者 三神亮
刊行 2022年3月1日
概要
スペシャルティコーヒーの章
スペシャルティコーヒーについて、精製についてならナチュラルより一層深くワイニーナチュラルや品種にいてならエチオピア原種より一層深くクルメなど他書より一層深く、まさにファナティックに解説。
スペシャルティにまつわるそもそもにズバッと回答。
「ダイレクトトレードはそもそもダイレクトではない?」や「ナチュラル精製といってもそもそも通常の方法に加えて4種類の方法がある」など既に普及しつつある情報のそもそもを知る事ができます。
日本最大級の生豆輸入業者「ワタル」の元社員だった三神氏だから語れる専門分野に特化した内容は初出の情報多数。
焙煎 Roast Designの章
「どのような焙煎アプローチを行うと、どのような結果が得られるのか?といった事実にフォーカスする」(本書より抜粋)良い悪いを定義せずに、各アプローチから得られる結果を知る、求める味わいのDesign(デザイン)を実現する方法を解説。
単なるプロファイルの解説じゃない!アプローチに対する相対的な結果を知る
ある焙煎機で焙煎した時のある温度だとこうなる、という様な端的な情報ではなく「低熱量だとBake傾向(甘味質感が出やすい)など相対的かつ具体的な情報を知れる。
「果たしてそれは重要なのか?水ぬ抜きとGold Color」など焙煎士がウズウズする項目が盛りだくさん。この章の面白さはを伝えるだけで1記事書けそう…
抽出 Brew Designの章
「抽出とはコーヒーのTaste(テイスト)成分を水に移動させる事である」(本書より抜粋)どのように何をどのぐらい移動させるのか、器具、素材、オペレーション、各項目ごとに解明されています。
最先端ならではの数値や技術についても解説。
TDSやEY、ステアやスピン(本書ではスプーン攪拌とスワリングと記述)など現在のスペシャルティコーヒーシーンな題材にも言及されているのが新書ならでは。
Roast Design CoffeeのBrew Designでは三神氏の店舗での実際の抽出レシピが水の硬度に至るまで明記されています。
まとめ
スペシャルティコーヒーの章
- スペシャルティコーヒーとは何か?
スペシャルティコーヒーコーヒーの定義?
スペシャルティコーヒーの誕生
SCA方式とCOE方式
ヒエラルキー
ディファレンシャルとアウトライト
ダイレクトトレード?
現在のスペシャルティシーン
- コーヒーの生産処理
Natural(ナチュラル:非水洗式)
Washed(ウォッシュド:水洗式)
Pulped Natural(パルプド・ナチュラル
- コーヒーの品種
World Cultivars(ワールド・カルティバーズ:世界的栽培品種)
Ethiopian Accessions(エチオピアン・アクセッションズ:エチオピア系品種)
Hybrid(ハイブリッド品種)
その他の品種
- 生産各国の代表的なマイクロクライメット/テロワール
南米
中米
アジア
アラブ
アフリカ
- *~インターミッション~*
焙煎 Roast Designの章
- 焙煎とは何か?
- 良い焙煎?浅煎り?深煎り?
- 新しい焙煎の考え方:Roast Design
嗅覚要素の切り分け
焙煎機の種類と特徴
生豆分析
焙煎度合(Under/Over Development)
焙煎傾向(Stir Fry/Bake) - Tips#1:生豆投入量、排気圧と回転速度
焙煎期間のフェーズ分解 - Tips#2:果たしてそれは重要なのか?
水ぬ抜きとGold Color - Tips#3:定まらない1ハゼ
焙煎欠点(Raw Burn/Scorch) - Tips#4:焦げの誤解
焙煎のケーススタディー - Roast Designの手順
①生豆投入量設定
②焙煎度合設定
③焙煎傾向設定
④投入温度設定
⑤排気調整設定
⑥ドラム回転速度設定
⑦各設定項目の微調整と諸注意 - Roast Design CoffeeのRoast Design
- *~インターミッション~*
抽出 Brew Designの章
- 抽出とは何か?
- 良い抽出?
- あたらしい抽出の考え方:Brew Design
抽出原則
3つの分解
実際の抽出における諸事項 - Brew Designの手順
①素材の品質確認
②飲料カテゴリー設定
③抽出器具設定
④水質設定
⑤抽出方法の仮設定~一貫した抽出方法を考える~
⑥濃度/抽出量設定
⑦酸味フレーバーVS.甘み/質感
⑧抽出方法の再設定~味の濃さ+質感の強さをどこまで強めるか(TDS補強)
⑨プレゼンテーション - Roast Design CoffeeのBrew Design
- ハンドドリップ
- エスプレッソ
- *~インターミッション~*
以上、3章、70項について説明されています。
国内で出ているコーヒー専門書の中でも特に焙煎の技法について、ここまで具体的かつ最新な情報が掲載されているのは、まず間違いなく本書だけ。新しい時代を感じ、世界基準の指標を学べる本当に良い本でした。
文庫本サイズの660円の中にはWCRC(ワールド・コーヒー・ロースティング・チャンピオンシップ)日本代表コーチであるファナティック三神氏のコーヒーの知識(中でも焙煎)が詰まっておりました。
「Roast Design Coffee Blog様(ファナティック三神氏)」を元に本書の内容をまとめられている(ご本人が明記)ので、気になる方はまずそちらを見てみると良いかも。
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