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コーヒー本「新しい珈琲の基礎知識」レビュー

コーヒー本
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コーヒー本「新しい珈琲の基礎知識」のレビューになります。

新しい珈琲の基礎知識

1,980円(Amazon)

概要

著者:堀口俊英(ほりぐち としひで)

堀口珈琲創始者、環境共生学・博士号取得ののちコーヒーに関する論文を発表

1990年にコーヒーショップ「(株)堀口珈琲」を開業。2019年に東京農業大学大学院・環境共生学博士課程卒業。在学期間中から現在まででコーヒーについての論文も発表している。
SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)の理事でもある。

論文:「スペシャルティコーヒーの品質基準を構築するための理化学的評価と官能評価の相関性に関する研究」「コーヒー生豆の流通過程における梱包,輸送,保管方法の違いが品質変化に及ぼす影響」等(ウェブ上で閲覧可能)

本書のテーマ

最新の情報、最新鋭の設備により品質と美味しさを定義

30年間コーヒーの探求をライフワークにしてきた著者の解説する“基礎”。それは入門書と対局にある記述で、初出の情報も多く、書き手の思惑をはるかに超えた業界向けのマニュアルのような読み応え。

本書から読み解くメッセージ

経験から推察した根拠を科学で定義することで、コーヒーの曖昧さを解消する

良いコーヒーがなぜ美味しいと感じるのか、その美味しさの根拠を味覚センサーで測定した「酸味・旨味・苦味・渋味・塩味」や「酸価」の値を比較しながら解説。

本書の目次

PART 1 コーヒーを淹れる

1 コーヒーを淹れる
・抽出器具の歴史
・抽出液の成分を知る
・コーヒー抽出液と水の関係
・透過法と浸漬法
・コーヒー抽出の基本のき
・さまざまなドリッパー
・メーカー推奨の方法で淹れてみる
・本書推奨のコーヒーの淹れ方
・堀口珈琲研究所のセミナーで行っている抽出法
・ネルドリップで淹れてみる
・クレバー(CLEVER)で淹れてみる
・フレンチプレスで淹れてみる
・金属フィルターで淹れてみる
・サイフォンで淹れてみる
・プアオーバー(Pour over)とアイスコーヒー
・アイスオーレなどミルクを加える場合の作り方
・水出しコーヒーを作る
・抽出専用のポットを選ぶ
・コーヒーミルを選ぶ
・コーヒーの粒度

2 エスプレッソを淹れる
・エスプレッソを楽しむ
・エスプレッソとは濃度のあるコーヒー
・業務用エスプレッソマシン
・イタリアのBAR
・世界中に広がるエスプレッソ
・エスプレッソを家庭で楽しむ
・定番のエスプレッソメニューを作る
・エスプレッソのよい風味

PART 2 コーヒーを知る

1 コーヒーの木と栽培からコーヒーを知る
・コーヒーは熱帯作物
・テロワールという概念
・標高の高い場所で収穫されたほうが風味がよい
・どうやって収穫するのか

2 流通からコーヒーを知る
・日本はブラジルとベトナムからの輸入量が多い
・現在のコーヒー生産量と消費量
・生産国から日本までの生豆の流れ
・国内での生豆の流通
・国内での焙煎豆の流通

3 スペシャルティコーヒーからコーヒーを知る
・スペシャルティコーヒーはいつ生まれたのか?
・サスティナブルコーヒーの誕生
・日本でSPはいつ生まれたのか?
・現在日本で流通しているコーヒー
・SPとCOは何が違う?
・SPとCOの理化学的数値の差

4 ケミカルデータからコーヒーを知る
・コーヒーの成分は複雑
・pHは産の強さを知る目安になる
・有機酸と風味の関係を知る
・有機酸と焙煎度の関係を知る
・有機酸の種類と風味の関係
・脂質量はコーヒーのテクスチャー(コク)に影響を及ぼす
・脂質量と風味の関係を知る
・酸価と風味の関係を知る
・アミノ酸の旨味(Umami)への影響
・カフェインの苦味への影響
・アミノ酸の旨味(Umami)とメイラード反応
・味覚センサーでわかること

5 コーヒーの品質を評価する方法を知る
・官能評価(テイスティング)とは
・生産国の等級とSP
・SCAの生豆鑑定(Green Grading)
・SCAの官能評価(カッピング)
・SCAのカッピングプロトコル
・SCAのカッピングの手順
・SCAJの官能評価

PART 3 コーヒー豆を選ぶ

1 精製方法の違いからコーヒー豆を選ぶ
・精製とは
・ウォッシュド(Washed)の精製
・ナチュラル(Natural)の精製
・ナチュラルはウォッシュドより風味の個性が出やすい
・ブラジルの3つの精製方法
・コスタリカのハニープロセス
・スマトラ方式の精製
・精製方法と発酵について
・嫌気性醗酵(Anaerobic:アナエロビック)
・乾燥方法の違い

2 生産国からコーヒーを知る 中南米編
・ブラジル
・コロンビ
・ペルー
・コスタリカ
・グァテマラ
・パナマ
・エルサルバドル

3 生産国からコーヒーを知る アフリカ編
・エチオピア
・ケニア
・タンザニア
・ルワンダ

4 生産国からコーヒーを知る カリブ海諸島
・ジャマイカ
・キューバ
・ドミニカ
・ハワイ(ハワイコナ)

5 生産国からコーヒーを知る アジア圏
・インドネシア
・パプアニューギニア
・東ティモール
・中国
・その他の生産国
・沖縄でのコーヒー栽培

6 品種からコーヒー豆を選ぶ・アラビカ種
・コーヒーの品種
・アラビカ種とカネフォーラ種
・アラビカ種の品種のいろいろ
・エチオピアの野生種「Heirloom」
・イエメンの品種
・ゲイシャ品種
・ティピカ品種
・ブルボン品種
・カトゥーラ品種
・SL品種
・パカマラ品種

7 品種からコーヒー豆を選ぶ・カネフォーラ種とハイブリッド品種
・カネフォーラ種
・リベリカ種
・ハイブリッド・ティモール品種(Hibrid de Timor)
・カティモール品種
・カスティージョ品種

8 焙煎からコーヒー豆を選ぶ
・焙煎とは
・焙煎の安定性
・さまざまな焙煎度のコーヒー
・焙煎度の決め方
・焙煎度による風味の変化
・焙煎豆の保存方法
・シングルオリジンとブレンド
・よい焙煎豆の品質の見分け方

PART 4 コーヒーを評価する

1 コーヒーを評価するための語彙を知る
・言葉でコーヒーの風味を表現する
・香りの用語
・果実の用語
・テクスチャーの用語
・欠点の風味の用語

2 コーヒーを評価する方法を知る
・消費者が可能な官能評価へ
・堀口珈琲研究所の新しい官能評価
・SCA方式と10点方式の官能評価点数の相互性
・10点方式と理化学的数値の相関性
・10点方式と味覚センサーの相関性
・コーヒーを評価するための基準と風味表現

3 選んだコーヒーを実際に官能評価する
・最初に6種のコーヒーの風味を知る
・実際に官能評価してみる
・味覚開発トレーニングの方法

出典:新しい珈琲の基礎知識

本書“基礎”にあらず、新しい専門知識解説書

出典:「新しい珈琲の基礎知識」126p,127p

良い意味で裏切られた!!入門本ばかりが出版され、新しい情報が少ないコーヒー専門書に投じられた新書

良いと感じた点

味覚センサーで測定された五味や、酸の質を表す酸価の比較など、他では目にできないデータの宝庫
大学院の研究設備を使用することで、通常では知りえないデータを計測、数値化して比較。
例えば、同一の生産国のCO(コマーシャルコーヒー)とSP(スペシャルティコーヒー)を様々な指標で比較しているので、なぜ美味しいのか(逆もしかり)が明確に。

アラビカ種やロブスタ種などの大きな種別での比較はこれまでも行われてきたが、同一の生産国のCOやSPでの比較、他にも精製方法での比較などが記載されているのは知る限りでは本書のみ。

イマイチだと感じた点

論文調の記述で難解。基礎知識を得たい初心者には不向きなギャップは感じる
まず、各検証を行うための前提に関する情報が難解なので、とてもじゃないがそれまでコーヒーを知らなかった層に読める難易度ではない。というか、並大抵の知識ではついてこられないところではある。

ちなみに、本書の一つ前にあたる「THE STUDY OF COFFEE」も難易度は高めなものの、本書より抽出に絞った解説になっているので、少し初心者向き。

とことん突き詰めたい方にこそおすすめしたい一冊

出典:「新しい珈琲の基礎知識」88p,89p

一般論のその先へ。品種の比較(ゲイシャとパカマラ)など、ハイクラスのSPに絞った比較検証も多数

一般論として、COとSPの違いを語られることは多いが、じゃあSP同士で比較した場合はどうなるのか?
同一生産国のアラビカ(カトゥーラ)とハイブリッド(カスティージョ)を標高ごとに比較した場合は?など、より高品質なコーヒーに特化した検証が行われている。

「パカマラとゲイシャの味わいはどう違うんですか?」のような難解な質問も理化学的な視点をいれることで明確な回答が可能に。専門店のスタッフなど、業界の方にも読んでもらいたい検証多数。

以上「新しい珈琲の基礎知識」レビューでした。
いきなり本を買うのは…という方はまず堀口氏の論文(「堀口俊英 論文」でウェブ検索)を見てみるのもおすすめです。

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