コーヒー焙煎の「生焼け」について
- コーヒー焙煎における生焼けとは
- 生焼けになる原因
- 生焼けにならない焙煎のコツ
解説していきます。
コーヒー焙煎における生焼けとは
✔︎内側、または全体の加熱不足により未発達な状態でネガティブを感じる状態
生焼けのコーヒーはどんな味なのか
- 香りに少し青臭さを感じる事もある
- 口に含んだ時に渋さを感じる
- 酸味とともにエグみを感じる
- 尖ったような嫌な酸味がある
渋さや酸味の質は豆の個性である可能性もあるのがややこしいところです。
生焼けになる原因とは
火力が強すぎる
✔︎火力が強すぎると表面だけが過熱される表面焼けになる
火力が強すぎると、焙煎にどのように作用するのか、「コーヒーおいしさの方程式」には、このように記述されています。
・原則として熱は高いほうから低いほうにしか伝わらない。
・例えは熱風が300℃で豆の表面温度も300℃だったら、熱は豆に移動できない。
・鰹のたたきのように、表面だけ焼けて中は生のままの状態をつくってしまう。熱の移動には温度差が必要だからだ。
出典:「コーヒーおいしさの方程式」80p
そして高火力でRoR(時間当たりの上昇温度)が高い「表面焼け」(Stir Fry)の生焼けの特徴☟
・Stir Fry傾向の生焼け
主にナッツや乾燥した穀物の様なフレーバーが感じられます。
出典:「Coffee Fanatic 三神のスペシャルティーコーヒー攻略本」105p
~省略、加えて酸味が強く、質感は軽くなります。
「Coffee Fanatic 三神のスペシャルティーコーヒー攻略本」ではデベロップメントフェーズ(1ハゼ以降)が短くてもこの傾向が強くなる、との事で、いわゆる浅煎りに感じやすいのもポイント。
火力が弱すぎる
✔︎火力が低すぎても生焼けのリスクはある
芳香成分の出現に必要な熱が不足していても、熱量不十分で生焼けを起こします。
私の感覚(+引用)としては
- 1ハゼ開始に必要な豆温度までの到達時間が遅すぎる
- 1ハゼ周辺のRoRが低すぎる
- 1ハゼが明確に来ない、もしくは発生しない(Coffee Fanatic 三神のスペシャルティーコーヒー攻略本105pより引用)
そして低火力でRoR(時間当たりの上昇温度)が低い「熱量不十分」(Bake)の生焼けの特徴☟
・Bake傾向の生焼け
主に草や、野菜のようなフレーバーが感じられます。
出典:「Coffee Fanatic 三神のスペシャルティーコーヒー攻略本」105p
~省略、酸味は単調で印象がはっきりせず、質感は重くなります。
初心者は意外とこちらの生焼けが多いのではないでしょうか。
焙煎方式によっては生焼けになりやすい
✔︎直火式の場合は輻射熱による影響が大きいので生焼けになりやすい
- 直火式による火からの輻射熱
- 半熱風の熱源がIH(aillioなど)の伝導熱
上記のような焙煎方式は伝熱方式の相性が悪く、豆内部に熱が伝わり難い。
特に盲点なのが半熱風式のaillioの伝導熱。熱源がIHなので周辺の空気が温まらず、結果対流熱をあまり利用できないんです。
そもそもコーヒーの生豆は火が伝わり難い
✔︎コーヒーの生豆は熱が伝わりにくい。(木材とほぼ同じ)
そして、コーヒー生豆とは、とても火が通りにくいんです。
コーヒー豆は熱伝導率が低いため、内部に熱が伝わるのにはじかんがかかる。コーヒー豆は銅の約4000分の1の伝導率で、木材とほぼ同じぐらい。
「コーヒーおいしさの方程式」103ページより引用
以上の引用から読み取れるのは
コーヒー生豆はとても内部熱が伝わりにくいので・・・
↓
急な加熱で強すぎる熱を与えると、内部に熱が伝わる前に表面だけ高温になり・・・
↓
内部に熱が伝わらない状態で焙煎が進行していく
この状態が生焼け(芯残り)です。
ちなみに・・・
生焼けで焙煎が進むとどうなるのか
✔︎内部に残った水分により、香味に良くない化学反応が進みます。
豆内部に水分が残った状態で高い火力を与えると、クロロゲン酸という成分が加水分解(※)という反応を起こします。
するとどうなるのか、以下のように解説されています。
クロロゲン酸が加熱されると、加水分解が起き、キナ酸とカフェー酸に分解される。つまり1つの酸から2つの酸が産まれ、生豆中の酸の量が増える。
「コーヒーおいしさの方程式」104ページより引用
キナ酸はキウイフルーツを思わせる強い酸味があり、
カフェー酸は酸味と強い渋みを持つ。
このため、加水分解が起こると酸味と渋みとが増強されてしまう。
以上のことから、生焼けで焙煎を進めた場合、香味には良くない影響がある事がわかります。
(※)加水分解とは
反応物に水が反応し、分解生成物が得られる反応のことである。
ウィキペディア-加水分解より引用
では、どのように焙煎する事で生焼けは防げるのでしょうか?
生焼けにならない焙煎のコツ
火力を下げる
✔︎煎りムラや収賄性のある強い酸味の場合は「下げる」
調整は下記の項目を1か所ずつ変更して調整すると良い
- 投入温度
- 火力(それに準ずる項目)
- 排気(排気は弱めると火力が強く、強めると火力は強くなります)
注意:低ければ良いという事ではなく、生焼けを感じない程度に調整するという事。
生焼けの傾向が出ている焙煎に対する相対的な意味となります。
火力を上げる
✔︎青臭さや起伏のない風味を感じる場合は「上げる」
先の話と矛盾するようですが、極度の長時間低温焙煎の場合、香味成分の発達に必要な熱量が不足して生焼けを感じることも
調整は基本「下げる」の逆ですがしいて言うなら
- 予熱(暖気運転)をしっかり行う
- RoR(時間あたりの上昇温度)が低すぎないか確認する
焙煎機にもよるので一概には言えませんが、20分以上の長時間焙煎だと生焼けのリスクが高くなります。
結果として1ハゼが起きないなどの兆候も見られます。
直火式の場合は注意が必要
✔︎直火式での焙煎は生焼けになりやすい
直火式とは穴のあいたドラム等に生豆を入れて、直接火をあてて焙煎する方式の事をいいます。
この方式の場合、熱源である火がとても高温。例えばガスコンロで焙煎する場合、火の温度は1900℃にもなるといわれます。
この火を直接あてる特徴上、半熱風式や熱風式と比べて、豆の表面温度が高温になりやすく、より注意が必要になります。
直火式は強火の遠火が良いと言われたりするのも、この事が関係しているのかもしれません。
まとめ
以上、コーヒー焙煎における生焼けの原因と、生焼けにしないコツを解説しました。
焙煎という事柄全体に言える事ですが、特に「生焼け」に関しては火力が強すぎても、弱すぎても良くないです。そして、何が原因で生焼けが起きているのかを知るには比較検証してカップの傾向を探るしかありません。それぞれの生焼けの味わい傾向を知ることで「生焼け」を知り制していきましょう。
コメント