コーヒー焙煎本「コーヒー自家焙煎が分かる本」のレビューになります。
コーヒー自家焙煎が分かる本
◆1,760円(Amazon)
著者 中野弘志
刊行 2021年10月5日
概要
1. 自家焙煎とは慣れ
焙煎は「技術ではなく作業」(本書より抜粋)が意味する事とは。素材である生豆の味わいとの関係や、焙煎度と味わいの関係にふれ、焙煎を読み解いてなお、作業と定義する著者の珈琲観を知る。
焙煎の極致「完煎」から見る技術ではなく作業の真意。
著者である中野氏いわく、焙煎とは釜内の空気を低温から高温に上昇させる工程を経て、「完煎」の一点を見極める「作業」だという。どこか淡泊な表現のそこに見え隠れする匠の心。
コーヒーの焙煎を取り扱う専門書で、私が知る限り唯一、温度や科学に(ほぼ)触れずあくまでも、実体験の必要性や考え方を中心に解説されてるエッセイのような構成。
2. コーヒーを「生きがい」にした人達
自家焙煎珈琲店の事業をまるでエッセイのようにどこか面白おかしく語りつつ、著者が出会った人々とその「生きがい」が明かされていく。
コーヒーを「生きがい」にするということ。
焙煎は(コーヒーは)分かり難い。でもそこに惹かれるんです。コーヒー好きなら妙に府に落ちる一文にみるコーヒーの魅力と、それを「生きがい」にする人々と小野氏とのやり取りに勇気をもらえました。
カリタに務め、コンサルとして独立し、様々な方とコーヒーを通して触れ合ってきた中野氏だから書けるリアルがそこにあります。
まとめ
(1. 自家焙煎とは慣れ)
第一章 自家焙煎はお客様に好かれる仕事
- 技を活かす
- 日本人は自家焙煎が好き
- 天職
- 外圧
- 差異
- 味覚
- 客は自家焙煎を選ぶ
- コンビニでも
- 客を知る
- 生豆を知る
- 焙煎機を知る
- 抽出とミル
- 抽出
- ミル
第二章 世界区分があることを知って欲しい
- 焙煎度(五段階のほうが分かりやすい)
日本はニと三
欧米は各国で異なる
焙煎度にはニーズがない - 焙煎作業(技術ではなく作業)
- 完煎
- 「完煎」がトレンド
焙煎体験で95%が分かる
味覚の明確化と完煎
第三章 焙煎機はダンパー付きの方がよい
- 焙煎機
- 半熱風と直火
- 焙煎練習法
量
火力
排気ダンパー
完煎
冷却レバー
第四章 生豆生産国は日本人のニーズに応え始めている
- コーヒー生豆(生産国図)(生産国規格)
品種改良
グローバル化
商社
BSCA(ブラジルスペシャルティコーヒー協会) - 生豆関係一覧
生豆
直輸入
品質
価格
スペシャリティ
ブルマン
ネット生豆
西ドイツ
第五章 コーヒー業界と自家焙煎の関係が解る
- コーヒー業界
2000年。
2001年。
2003年。
2005年。
2014年。
SCAJの定義 - 新聞の見出しに自家焙煎
- 座学より実学
- 刷り込み
- よくある質問
- 喫茶から家庭までのコーヒー変遷
喫茶店経営が夢
コーヒー自家焙煎教本出版
自家焙煎開業セミナー - 「教え魔」と「気になる一文」
ワシを知らんか?
自己満足
焙煎して
これは教本ではない。
だが良い本
先進国に喫茶店はない
どこが違うのか - コーヒー業は「小さい方」が素晴らしい
口だけの嗜好品
客が拒否した棲み分け
「喫茶店は私の夢」も変化
第六章 嗜好品のコーヒーはあれこれではなく一品を飲み続ける
- コーヒーは嗜好品
- 「焙煎」から「嗜好品へ」
古くは宮仕え
付いてきたご主人
引きこもりビジネス - アンパンができるまで
- 和食・風土・嗜好飲料
ドナルド・キーンさんの一文
留学体験
嗜好飲料 - 研ぐコーヒー
- ストレート全滅体験
混ぜ物
ブレンドとストレート
ブレンドの作り方は補正にある - コーヒーの主役は飲用者
生豆販売も変化
CAFEの冠詞化
トレンド - コーヒーのなぜ?七不思議
道と嗜み
インストラクター
メディア
抽出
生豆(なままめ)って何?
ムラシと焙煎度 - プロからアマへ主役交代
いらざる物
プロは社会
アマは個人
客から学ぶ
焙煎機と生豆 - 「道」はなくても
「道」より味
お湯かけ先生失職
廃刊
珈琲遍歴
生産国ネット情報
焙煎機
生豆
苦情
人・物・金
第七章 客の好みは甘味をもったブレンドにある
- ブレンドが客が作る
ルーツ
うまみ
ホットコーヒー
うまい、おいしい
クチコミ - ブレンドが繁盛店の鍵
旧ブレンド
調和などしない
ブレンドは無限大
味覚感覚
甘味ブレンド - 茶商と珈匠
同じショウでも
相場で稼ぐ
茶商の店内cafe
特売チラシ
嗜好飲料の自家焙煎 - 平成から令和へ・コーヒー展望
30年は長過ぎる
客3タイプ
出自の人柄
バーテン上がりの真似
坂田敏彦さんご一家のコーヒー
自家焙煎はさらに進化
第八章 コーヒーが好きで始めましたと言えば客は納得する
- ブレンドを用意する
- アイス
- モーニングとブレンド
ブレンド100%
セットメニュー
併設店との違い
コーヒーは文化の香り - コーヒー百態
南蛮渡来
自営業
自家焙煎の卸
ブレンド
卸と生豆
抽出器
能書
一誠と一味 - 販促のヒント
- 出店の方法
- 自家焙煎のチェックリスト
- 旧態は終わる
生き残りをかけて
家庭消費の未開
素人だから
客に変化
ストレート価値
変遷に関わってきて
2. コーヒーを「生きがい」にした人達
- 40代50代からの自家焙煎は「生きがい」
- 焙煎器で苦労した人
- 受講者たちの人柄
- デモシカの実態
- 喫茶店だから続けられた48年
- 映画と自家焙煎
- 併設店の効用(1)
- 併設店の効用(2)
- 1に生豆・2に焙煎
- アンケート
- ご回答いただいた方々
- 焙煎はAIにできる?
- 自家焙煎「生きがい」
- IKIGAI
- 急がない人の自家焙煎
- コーヒーが気になる量販店
- コーヒーは済民こと始め
- 井の中の蛙・自家焙煎店主
- 珈琲好々爺
- 身の丈起業自家焙煎
- 定義はない自家焙煎
- 自家焙煎の薬石
- 珈琲の古今と、今後は?
- むすび
以上、2章、9項について説明されています。
著者は焙煎においては「完煎」に重きを置いており、なおかつ味わいは素材が作り出す物という考えが強く、技術や科学的考察には触れられていません。
著者である中野氏の生の経験をもとに、あくまでも感情(人の心)を中心に置き、コーヒー業界の焙煎という「事業」という側面での意見として語られているため、他の本にはない独特な切り口でした。コーヒーの活動をこれから行っていきたい、将来の開業に向けての心構えを知りたい、などきっかけや気づきを与えてくれるかもしれません。
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